海洋温度差発電

  海洋温度差発電(Ocean Thermal Energy Conversion: OTEC)は,表層の温かい海水(表層水)と深海の冷たい海水(深層水)との温度差を利用して発電する技術であり,表層水と深層水の温度差が20°C以上の海域が適している。発電方式は,主としてオープンサイクル,クローズドサイクル,ハイブリッドサイクルの 3 種類がある。
(1)オープンサイクル
  オープンサイクルは図―1に示すとおり,蒸発器,タービン,発電機,凝縮器から構成され,表層水で作る水蒸気を作動流体として使用する。蒸発器,タービン,凝縮器の中は真空ポンプによって減圧し,表層水を蒸発器に導き蒸発させる。この水蒸気を作動流体としてタービンに送り発電を行う。タービンから出た水蒸気は凝縮器に入り,汲み上げられた深層水によって冷却され,海に排出される。本システムは,作動流体がサイクル内を循環しないため,オープンサイクルと呼ばれている。


(2)クローズドサイクル
  クローズドサイクルは,蒸発器,タービン,発電機,凝縮器,作動流体ポンプから構成され,アンモニアと水の混合媒体を作動流体として使用する。蒸発器,タービン,凝縮器はパイプで繋がれており,低沸点の作動流体が封入されている。作動流体は,蒸発器で表層水から熱を受け取り蒸発する。蒸発した作動流体はタービンに送られて発電した後,凝縮器で汲み上げられた深層水で冷却されて液化し,作動流体ポンプにて再び蒸発器へ送られる。本システムは作動流体がサイクル内を循環するため,クローズドサイクルと呼ばれている。


(3)ハイブリッドサイクル
  ハイブリッドサイクルは,オープンサイクルとクローズドサイクルを組み合わせたシステムである。基本構造はクローズドサイクルであるが,蒸発器に導入する熱源が異なる。クローズドサイクルでは蒸発器に表層水を直接導入するのに対し,ハイブリッドサイクルでは,一旦オープンサイクルの蒸発器に表層水を導入し,そこで得られた水蒸気を熱源として使用する。このことから,クローズドサイクルと比べ,蒸発器の海水による汚染がなく,性能の低下が防げる。
  現状では,発電システムも低出力でコストも高く,実用性は低いが,太陽エネルギーや海水淡水化技術を組み合せて,高出力あるいは付加価値の高い複合的なシステムとすべく,開発を進めている。

参 考 文 献

1) NEDO 海外レポート NO. 1062, 2010.4.22 pp. 31〜32
   

2) NEDO 再生可能エネルギー技術白書 pp. 365〜368
   

3) 佐賀大学海洋エネルギー研究センターホームページ
   



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