自己治癒コンクリート

  本来,コンクリートは,材料設計などに特別な配慮を講じなくても,ひび割れを閉塞する機能を持っている。これは,コンクリート中の未反応セメントが,ひび割れの発生に伴い水分と接触できるようになり,再水和を生じることによるもので,“自然治癒”という。
 また,水分などが存在する環境下でコンクリートのひび割れを閉塞,あるいはそれを促進させることを期待し,適切な混和材の使用などの材料設計を行ったコンクリートにおいて,ひび割れが閉塞する現象を“自律治癒”という。
 自己治癒コンクリートは,この「自然治癒」と「自律治癒」の特性を持たせたものである。さらに,ひび割れの自動的な補修作業を行うことを目的としたデバイス類があらかじめ埋設されたコンクリートにおいて,その機構によってひび割れが閉塞するものを自動修復コンクリートという。  以下に,自己治癒および自動修復コンクリートの研究・開発事例の一部を紹介する。
 (1)セメントの水和ポテンシャルを利用した自己治癒
 セメントの水和活性を敢えて抑えた材料を主材とすることで,意図的に未反応セメントを残存させ,これと水が再水和することによりひび割れを閉塞する。
 (2)膨張材-防水材-再結晶材の複合作用による自己治癒
 膨張材,防水材,再結晶材を混合したセメント組成物を用いることで,これと水が再水和することによりひび割れを閉塞する。
 (3)バクテリアを利用した自己治癒
 不活性化したバクテリアを化学的な餌とともにコンクリートに組込み,ひび割れからの酸素と水の供給により活性化したバクテリアが餌を炭酸カルシウムに変化させひび割れを閉塞する。
 (4)ネットワーク中空路を用いた自動修復
 コンクリート中に中空路を設置しておき,ひび割れ発生後に中空路から補修剤を供給することにより,ひび割れを閉塞する。本機構には,中空路に事前に補修剤を充填しておく「貯蔵型」と,ひび割れ発生後に中空路に補修剤を充填する「注入型」が提案されている。(図―1)

参 考 文 献

セメント系材料の自己治癒に関するシンポジウム委員会報告書,論文集,付録(公益社団法人 日本コンクリート工学会 セメント系材料の自己治癒技術の体系化研究専門委員会,2011年 6 月 9 日)
   



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